ETFとは?
ETFは「Exchange Traded Fund(上場投資信託)」の略称です 。これは、投資信託の一種でありながら、株式のように証券取引所に上場しているため、株式と同様に売買できる金融商品です 。日本語では「上場投資信託」と呼ばれます 。投資信託とETFの最も大きな違いは、「上場しているかどうか」という点にあります 。
ETFの主な特徴として、まず挙げられるのは、特定の指数に連動するように運用されている点です 。この指数は、株式市場の代表的な指標(例えば、日本の日経平均株価やアメリカのS&P 500など)、特定のセクターの指数、あるいは金や原油といったコモディティの価格など、多岐にわたります。一つのETFを購入するだけで、その指数を構成する複数の資産に分散投資できるため、投資初心者にとってリスクを抑えやすい仕組みと言えるでしょう 。
また、ETFの価格は、株式と同様に、取引時間中に市場の需給によってリアルタイムで変動します 。このため、投資家は、市場の動きを見ながら、自分の希望する価格で売買注文を出すことができます。取引は、株式と同様に、証券会社の口座を通じて行われ、指値注文や成行注文といった注文方法を利用できます 。一般的な投資信託が銀行や郵便局などでも購入できるのに対し、ETFは主に証券会社での取り扱いとなります 。
ETFのメリットとデメリット
初心者にとって、ETFには多くのメリットがあります。まず、少額から複数の資産に分散投資ができる点が挙げられます 。これにより、個別の銘柄選択に悩むことなく、リスクを抑えた投資が可能です。また、一般的に運用コストが低いため、長期的な投資において有利に働きます 。さらに、ETFが連動する指数は一般に公開されており、値動きが分かりやすいという特徴もあります 。取引時間中にリアルタイムで売買できるため、市場の動きに合わせて柔軟に対応できる点もメリットです 。そして、多くのオンライン証券プラットフォームを通じて比較的簡単にアクセスできます 。
一方、デメリットとしては、まず、証券会社の口座開設が必要となる点が挙げられます 。また、1口単位での購入となるため、従来の投資信託に比べて最低購入金額がやや高くなる可能性があります 。分配金が自動的に再投資されないため、再投資を希望する場合は手動で行う必要がある点も、人によっては手間と感じるかもしれません 。さらに、ETFの運用成績が完全に連動を目指す指数と同じになるとは限らず、わずかな差異(トラッキングエラー)が生じる可能性があります 。そして、株式と同様に、市場の変動によって価格が下落するリスクがあることも理解しておく必要があります 。
日本のETF
日本の株式市場は、東京証券取引所(TSE)が中心的な役割を担っています。TSEには、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場といった異なる市場区分があり、上場する企業の規模や特性によって分けられています 。プライム市場は、最も規模が大きく、流動性の高い企業が上場しています。
日本の主要な株価指数としては、以下のものが挙げられます。
- TOPIX(東証株価指数): TSEプライム市場に上場するすべての銘柄を対象とした指数で、日本の株式市場全体の値動きを示す広範な指標です 。浮動株時価総額加重方式で算出されており、市場全体の動向を把握するのに適しています。2024年5月末時点で2000社以上の企業が含まれています 。
- 日経225: TSEプライム市場に上場する代表的な225社の株式で構成される指数で、日本経済の動向を示す指標として広く知られています 。株価の高い銘柄の影響を受けやすい株価平均型指数です 。
- JPX日経インデックス400: TSEに上場する銘柄の中から、時価総額、売買代金、ROE(自己資本利益率)などの指標に基づいて選ばれた400銘柄で構成される指数です 。資本効率の高い企業を選定することを目的としており、定性的な評価も加味されています。
- JPXプライム150指数: 2023年に算出が開始された新しい指数で、TSEプライム市場の上位150銘柄を対象としています 。企業の「稼ぐ力」と「市場評価」という2つの観点から選定されており、大型グロース株の特性を持つとされています。
これらの指数に連動する代表的な日本のETFとしては、主に以下のものが挙げられます 。特にNEXT FUNDSシリーズは、多くの指数に連動するETFを提供しています。
ETF名 | 証券コード | 連動対象指数 | 概算信託報酬率 | 分配頻度 |
---|---|---|---|---|
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信 | 1306 | TOPIX | 0.060% | 年1回(7月) |
NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 | 1321 | 日経225 | 0.106% | 年1回(7月) |
NEXT FUNDS JPX日経インデックス400連動型上場投信 | 1591 | JPX日経インデックス400 | 0.110% | 年2回(4月、10月) |
NEXT FUNDS JPXプライム150指数連動型上場投信 | 159A | JPXプライム150指数 | 0.165% | 年2回(4月、10月) |
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(証券コード:1306)は、TOPIXに連動し、日本の株式市場全体に幅広く投資することができます 。2025年3月18日現在の情報では、信託報酬率は年率0.0598%(税込)で、分配金支払い基準日は毎年7月10日です 。直近の分配金は、2024年7月10日に100口あたり5,790円でした 。
NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(証券コード:1321)は、日経225に連動し、日本を代表する大企業225社に投資できます 。信託報酬率は年率0.10648%(税込)で、分配金支払い基準日は毎年7月8日です 。分配金額は10口あたりで表示されます 。
NEXT FUNDS JPX日経インデックス400連動型上場投信(証券コード:1591)は、JPX日経インデックス400に連動し、資本効率の高い日本企業400社に投資できます 。信託報酬率は年率0.11%(税込)で、分配金支払い基準日は毎年4月7日と10月7日です 。直近の分配金は2024年10月7日に272円でした 。
NEXT FUNDS JPXプライム150指数連動型上場投信(証券コード:159A)は、JPXプライム150指数に連動し、高い収益性と市場評価を持つ日本を代表する150社に投資できます 。信託報酬率は年率0.165%(税込)で、分配金支払い基準日は毎年4月7日と10月7日です 。直近の分配金は2024年10月7日に100口あたり640円でした 。
これらのETFは、それぞれ連動する指数の特徴が異なるため、投資家の考え方によってどのETFを選ぶかが変わってきます。
アメリカのETF
アメリカの株式市場は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とNASDAQという二つの主要な取引所が中心です。世界最大の株式市場であり、多様な投資機会を提供しています。
アメリカの主要な株価指数としては、以下のものが挙げられます。
- S&P 500: アメリカを代表する500社の大型株で構成される指数で、米国株式市場全体の動向を示す最も重要な指標の一つです 。時価総額加重方式で算出されます。
- NASDAQ 100: NASDAQに上場する非金融企業のうち、時価総額上位100社で構成される指数で、テクノロジー関連企業が多く含まれているのが特徴です 。
- ダウ・ジョーンズ工業株価平均(DJIA): アメリカを代表する30社の優良株で構成される指数で、歴史が長く、市場の動向を示す指標として広く用いられています 。株価平均型指数です。
- CRSP USトータル・マーケット・インデックス: 米国株式市場のほぼ100%をカバーすることを目的とした指数で、大型株から小型株まで、幅広い銘柄で構成されています 。
これらの指数や投資スタイルに連動する代表的なアメリカのETFとしては、主に以下のものが挙げられます 。特にバンガード社のETFは、低コストで人気があります。
ETF名 | ティッカーシンボル | 連動対象指数/投資スタイル | 概算経費率 | 分配頻度 |
---|---|---|---|---|
バンガードS&P 500 ETF | VOO | S&P 500 Index | 0.03% | 四半期 |
インベスコQQQトラストシリーズ1 ETF | QQQ | NASDAQ 100 Index | 0.20% | 四半期 |
バンガード・トータル・ストック・マーケットETF | VTI | CRSP US Total Market Index | 0.03% | 四半期 |
SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF | SPYD | S&P 500 High Dividend Index | 0.07% | 四半期 |
バンガード・米国高配当株式ETF | VYM | FTSE High Dividend Yield Index | 0.06% | 四半期 |
バンガードS&P 500 ETF(ティッカーシンボル:VOO)は、S&P 500指数に連動し、米国の大型株への幅広い投資を低コストで実現できます 。経費率は0.03%と非常に低く、2025年2月28日時点の30日SEC利回りは1.21%です 。
インベスコQQQトラストシリーズ1 ETF(ティッカーシンボル:QQQ)は、NASDAQ 100指数に連動し、テクノロジーや成長株への投資に適しています 。経費率は0.20%で、2024年12月23日の配当落ち日における年間配当は$3.33864でした 。
バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(ティッカーシンボル:VTI)は、CRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動し、米国株式市場全体をカバーする幅広い分散投資が可能です 。経費率はVOOと同様に0.03%と低く、2025年2月28日時点の30日SEC利回りは1.19%です 。
SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF(ティッカーシンボル:SPYD)は、S&P 500指数採用銘柄のうち、配当利回りの高い上位80銘柄に投資するETFです 。経費率は0.07%で、2025年3月17日時点の年間配当利回りは4.93%です 。
バンガード・米国高配当株式ETF(ティッカーシンボル:VYM)は、FTSEハイディビデンド・イールド・インデックスに連動し、米国市場の高配当株に幅広く投資できます 。経費率は0.06%で、2025年2月28日時点の30日SEC利回りは2.53%です 。
日本とアメリカのETFの主な違い
日本とアメリカのETFには、初心者にとっていくつかの重要な違いがあります。
まず、取引時間と通貨が異なります。日本のETFは、日本の株式市場が開いている時間帯(通常、日本時間午前9時から午後3時まで)に、日本円で取引されます 。一方、アメリカのETFは、アメリカの株式市場が開いている時間帯(通常、米国東部時間午前9時30分から午後4時まで、日本時間では夜間から早朝にかけて)に、米ドルで取引されます 。
費用と手数料も異なります。日本のETFの取引には、国内株式と同様の証券会社の手数料がかかります 。アメリカのETFを日本の証券会社を通じて取引する場合、外国株式の取引手数料がかかる可能性があり、国内株式の手数料とは異なる場合があります。さらに、円をドルに、またはドルを円に交換する際には、為替手数料が発生します 。
税金についても注意が必要です。日本とアメリカのETFからの利益(譲渡益や分配金)は、原則として日本で課税されます(約20.315%) 。ただし、アメリカのETFから得られる分配金には、米国で源泉徴収(通常は日米租税条約に基づき10%)が行われる場合があり、日本で課税される際に外国税額控除の手続きが必要となることがあります 。
利用のしやすさについては、日本の主要なオンライン証券会社のほとんどが、日本とアメリカ両方のETFを取り扱っています 。しかし、取り扱っているアメリカのETFの種類は証券会社によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です 。
初めてのETF選び
初めてETFを選ぶ際には、まず自身の投資目標を明確にすることが重要です。長期的な資産成長を目指すのか、定期的な収入(分配金)を得たいのか、あるいは市場全体への分散投資を優先したいのかなど、目的に合ったETFを選ぶようにしましょう 。
次に、ETFが連動している指数の内容を理解することが大切です 。指数を構成する銘柄やセクターを知ることで、そのETFのリスクとリターンの特性を把握することができます。例えば、広範な市場指数に連動するETFは比較的リスクが低いと考えられますが、特定のセクターに特化したETFは市場全体の動向よりも大きく変動する可能性があります。
経費率も重要な選択基準の一つです 。経費率が低いほど、長期的に見て投資家の手元に残る利益が多くなる傾向があります。同じような指数に連動するETFであれば、経費率の低いものを選ぶのが一般的です。
また、流動性も確認しておきましょう 。流動性が高いETFは、取引が活発に行われているため、自分の希望するタイミングで売買しやすいというメリットがあります。一般的に、取引量の多いETFを選ぶと良いでしょう。
初心者は、まず少額から投資を始め、徐々に慣れていくのがおすすめです 。また、最初はTOPIXやS&P 500といった、広範な市場指数に連動するETFを選ぶことで、分散投資の効果を比較的容易に得ることができます 。
まとめ
ETFは、分散投資、比較的低いコスト、そして取引の容易さといった点で、初心者にとって魅力的な投資対象と言えます。日本とアメリカの市場には、それぞれ多様な指数に連動するETFが存在し、投資家のニーズや目標に合わせて選択肢が豊富に用意されています。
この記事で紹介した代表的なETF(日本のTOPIX、日経225、JPX400、JPXプライム150、アメリカのS&P 500、NASDAQ 100、トータル・ストック・マーケット、高配当ETF)は、あくまで入門としての一例です。ご自身の投資目標やリスク許容度に合わせて、さらに詳しく調べてみることをお勧めします。
ETF投資は、他の投資と同様にリスクを伴います。投資を始める前に、ETFの仕組みや特性をしっかりと理解し、ご自身の判断で慎重に行うようにしましょう。しかし、適切な知識と準備があれば、ETFはあなたの資産形成を力強くサポートしてくれるはずです。
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