初めて株取引に挑戦する方にとっては、専門用語や複雑な手続きが多く、どこから始めれば良いのか戸惑うこともあるでしょう。特に、株の売買注文をどのように行うのかは、取引の基本中の基本であり、最初にしっかりと理解しておくべき重要なポイントです。
この記事では、株取引の経験がない全くの初心者の方に向けて、株の注文方法に焦点を当て、注文の種類や、実際に注文を行う際に知っておくべきことを具体的にわかりやすく解説します。株取引の世界への第一歩を、このガイドと共に踏み出しましょう。
株の注文方法の基本:成行注文と指値注文
株の注文方法には、主に「成行注文(なりゆきちゅうもん)」と「指値注文(さしねちゅうもん)」の2つの基本的な種類があります。 これらの注文方法を理解することは、自身の投資戦略や取引の目的に合わせて適切な注文を出すために非常に重要です。
成行注文(なりゆきちゅうもん):スピーディーな取引を優先
成行注文は、「いくらでも良いから、とにかくすぐに買いたい(売りたい)」という場合に選択する注文方法です。 この注文方法では、価格を指定しないため、その時点の市場で最も有利な価格で取引が成立する可能性が高くなります。 多くの証券会社では、特に指定がない場合、この成行注文がデフォルト設定となっていることが多いです。
メリット:
- 高い約定力: 価格を指定しないため、取引が成立する可能性が非常に高いことが最大のメリットです。 「できるだけ早く取引を成立させたい」という場合に適しています。
- 迅速な取引: 現在の市場価格で即座に取引が行われるため、市場の動きに素早く対応したい場合に有効です。 株価が上昇トレンドにある銘柄など、「買い逃したくない」という状況で利用されることがあります。
デメリット:
- 価格の不確実性: 成行注文は、その時の市場価格で約定するため、予想外の価格で取引が成立する可能性があります。 特に、市場が大きく変動している場合や、取引量の少ない銘柄の場合には、希望しない価格で約定してしまうリスクがあります。 例えば、買おうとした瞬間に価格が急騰したり、売ろうとした瞬間に価格が急落したりする可能性も考慮しなければなりません。
指値注文(さしねちゅうもん):希望の価格で取引
指値注文は、「〇〇円以下であれば買いたい」「〇〇円より高ければ売りたい」というように、希望する価格を指定して出す注文方法です。 投資家は、自分が納得できる価格でのみ取引を行いたい場合にこの注文方法を選択します。
指値注文には、「買い指値注文」と「売り指値注文」があります。買い指値注文は、指定した価格以下になった場合にのみ買付が行われ、売り指値注文は、指定した価格以上になった場合にのみ売却が行われます。
メリット:
- 価格コントロール: 最も大きなメリットは、取引価格を自分で指定できることです。 これにより、意図しない高値での購入や安値での売却を防ぐことができます。
- 計画的な取引: あらかじめ目標とする価格が決まっている場合や、特定の価格帯でのみ取引を行いたい場合に有効です。
デメリット:
- 約定しない可能性: 指定した価格に市場価格が到達しない限り、注文は成立しません。 そのため、取引の機会を逃してしまう可能性もあります。
特徴 | 成行注文 | 指値注文 |
---|---|---|
価格指定 | なし(その時点の最良価格) | あり(希望する価格) |
約定スピード | 一般的に速い | 市場価格によるため、遅れる場合や約定しない場合がある |
価格の確実性 | 低い(価格は保証されない) | 高い(指定価格以下での購入、以上での売却) |
約定の確実性 | 高い(成立しやすい) | 低い(指定価格に達しないと成立しない) |
優先順位 | 約定を優先 | 価格を優先 |
初心者向けの利用場面 | すぐに取引したい場合で、多少の価格変動を許容できる場合 | 特定の価格で購入・売却したい場合で、時間に余裕がある場合 |
その他の重要な注文方法:逆指値注文
「逆指値注文(ぎゃくさしねちゅうもん)」は、指定した価格に株価が到達した時点で作動する特殊な注文方法です。 これは、主にリスク管理や、ある特定の株価水準を超えた場合や下回った場合に取引を行いたいという投資家のニーズに応えるものです。
逆指値注文がトリガー価格に達すると、通常は成行注文に変わり、その時点の市場価格で可能な限り早く約定されます。
売り逆指値注文(うりぎゃくさしねちゅうもん)
売り逆指値注文は、現在の市場価格よりも低い価格に設定され、株価がその指定した価格まで下落した場合に、保有している株を売却する注文です。 これは、株価が下落した場合の損失を限定するために、「ストップロス注文」としてよく利用されます。
例えば、6,800円でA社の株を購入した場合、株価がさらに下落した場合の損失を抑えるために、6,700円に売り逆指値注文を設定することができます。これにより、株価が6,700円まで下がると自動的に売却され、損失を1株あたり100円に限定できます。 ただし、にもあるように、逆指値注文は通常、トリガー価格に達すると成行注文として執行されるため、急激な価格変動時には、指定した価格よりも低い価格で約定する可能性があることに注意が必要です。
買い逆指値注文(かいぎゃくさしねちゅうもん)
買い逆指値注文は、現在の市場価格よりも高い価格に設定され、株価がその指定した価格まで上昇した場合に、株を購入する注文です。 これは、株価がある一定の水準を超えて上昇し始めたときに、その勢いに乗って取引に参加したい場合に利用されます。
例えば、現在20.50ドルで取引されている株に対して、「22.20ドルを超えたら買う」という買い逆指値注文を設定することができます。株価が22.20ドル以上に達すると、その時点の市場価格で株式が購入されます。
ストップリミット注文
逆指値注文の変形として、「ストップリミット注文」があります。これは、トリガー価格に達した後、成行注文となるのではなく、あらかじめ指定した指値価格で、あるいはそれよりも有利な価格でのみ約定する指値注文となるものです。 これにより、価格のコントロール性は高まりますが、市場価格が指定した指値価格に合致しない場合には、約定しないリスクも高まります。
株の注文方法:ステップバイステップガイド
実際にオンライン証券会社のプラットフォームを使って株の注文を出す際の基本的な手順を解説します。証券会社によって画面のデザインや操作方法は多少異なりますが、基本的な流れは共通しています。
ステップ 1:証券会社の取引画面にログイン
まず、利用しているオンライン証券会社のウェブサイトやスマートフォンアプリに、IDとパスワードを入力してログインします。
ステップ 2:銘柄を選ぶ
取引したい株の銘柄を検索します。銘柄名または4桁の銘柄コードを入力して検索することが一般的です。 どの銘柄を購入するか迷う場合は、普段利用している企業や、株主優待や配当がもらえる銘柄から探してみるのも良いでしょう。
ステップ 3:注文画面を開く
銘柄の詳細画面から、「取引」や「注文」といったボタンをクリックまたはタップして、注文入力画面を開きます。
ステップ 4:取引の種類を選ぶ
通常、「現物取引(買い注文)」を選択します。これは、自分の資金で購入する取引です。 証券会社によっては、「信用取引」という、資金を借りて行う取引方法もありますが、初心者のうちは現物取引に限定することをお勧めします。
ステップ 5:注文内容を入力する
- 株数(数量): 購入したい株数を入力します。多くの銘柄では、100株単位での取引(単元株数)となっていますので注意が必要です。 注文する際には、この単元株数の整数倍で入力する必要があります。
- 価格: 「指値」または「成行」を選択します。 指値を選択した場合は、希望する購入価格を入力します。 成行を選択した場合は、価格の入力は不要です。
- 有効期間: 注文が有効な期間を選択します。「当日中」を選択すると、その日の取引時間内に約定しなければ注文は失効します。「期間指定」を選択すると、数日間から数週間、あるいは数ヶ月といった期間を指定できます。 証券会社によっては、「今週中」といった選択肢もあります。
- 預り区分: 「特定口座」か「一般口座」を選択します。初心者の場合は、証券会社が税金の計算や徴収を行ってくれる「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶと、確定申告の手間が省けるため便利です。
- 執行条件: 「寄付」「引け」「不成」など、より詳細な注文の条件を指定できる場合がありますが、初心者の場合は特に指定しなくても問題ありません。
ステップ 6:注文内容の確認と発注
入力した注文内容を再度確認し、間違いがないか慎重にチェックします。 特に、銘柄、株数、価格、注文方法、有効期間などをしっかりと確認しましょう。 確認後、「注文確認」ボタンなどをクリックし、最終的な確認画面で取引パスワードを入力して「発注」ボタンを押せば、注文は完了です。
注文の有効期間:当日中から期間指定まで
株の注文を出す際には、「有効期間」を指定する必要があります。これは、その注文がいつまで有効であるかを決めるもので、取引戦略や市場の状況によって適切な期間を選ぶことが重要です。
当日中(とうじつちゅう): これは、その日の取引時間内のみ有効な注文です。もしその日のうちに約定しなかった場合、注文は自動的にキャンセルされます。 市場を頻繁にチェックできる方や、その日のうちに取引を成立させたい場合に適しています。
期間指定(きかんしてい): こちらは、注文を出す際に、有効な期間を数日から数週間、あるいは証券会社によっては数ヶ月先まで指定できるものです。 例えば、「1週間後の〇〇円以下になったら買う」という指値注文を出す場合に便利です。ただし、にあるように、指定できる期間や、期間内でも注文が無効になるケース(権利確定日を跨ぐ場合など)があるため、証券会社のルールを確認することが重要です。証券会社によっては、「今週中」という選択肢があり、発注日からその週の最終営業日まで有効となる場合もあります。
注文の有効期間を理解することは、意図しない注文の失効や、逆に意図せず長期間注文が有効になってしまうことを防ぐために重要です。自身の取引スタイルや、市場の動向に合わせて適切な有効期間を選択しましょう。
初心者が陥りやすい注文の間違いと対策
株取引の初心者は、注文方法を理解する過程で、いくつかの間違いを犯しやすい傾向があります。これらの間違いを事前に知っておき、対策を講じることで、より安全かつスムーズな取引を行うことができます。
間違い 1:株数(数量)の入力ミス
購入したい株数を誤って入力してしまうことは、初心者によくあるミスの一つです。 特に、単元株数を意識せずに注文してしまうと、意図した金額と大きく異なる取引になってしまう可能性があります。
対策: 注文画面で株数を入力する際は、必ず単位を確認し、希望する株数を正確に入力するように心がけましょう。多くの証券会社では、入力した株数に応じて概算の取引金額が表示されるため、これを目安に間違いがないか確認することも有効です。
間違い 2:注文方法(成行・指値)の選択ミス
成行注文と指値注文の特性を十分に理解せずに選択してしまうと、意図しない結果につながることがあります。 例えば、特定の価格で購入したいのに誤って成行注文を出してしまい、予想よりも高い価格で約定してしまうといったケースが考えられます。
対策: 注文を確定する前に、自分が選択した注文方法が、取引の目的や戦略に合致しているかを再確認しましょう。特に初心者の場合は、価格をコントロールしやすい指値注文から始めるのがおすすめです。
間違い 3:希望価格の入力ミス
指値注文で希望価格を入力する際に、桁を間違えたり、現在の市場価格と大きく異なる価格を入力してしまうことがあります。 これにより、注文がなかなか約定しなかったり、逆に意図しない価格で約定してしまう可能性があります。
対策: 希望価格を入力する際は、現在の株価をしっかりと確認し、入力した価格に間違いがないかを再度チェックしましょう。証券会社のプラットフォームによっては、現在値に近い価格が自動的に表示される機能もあるので、参考にすると良いでしょう。
間違い 4:有効期間の設定ミス
注文の有効期間を誤って設定してしまうと、意図せず注文が失効してしまったり、逆に長期間にわたって注文が有効なままになってしまうことがあります。
対策: 注文を出す際には、取引の目的や、いつまでに約定させたいかを考慮して、適切な有効期間を選択しましょう。初心者の場合は、まずは「当日中」の注文に慣れるのが良いかもしれません。
間違い 5:確認を怠る
最も重要な対策は、注文内容をしっかりと確認することです。 多くのオンライン証券会社では、注文を確定する前に確認画面が表示されます。この画面で、銘柄、株数、価格、注文方法、有効期間などのすべての項目に間違いがないかを必ず確認する習慣をつけましょう。確認を怠ると、思わぬ取引をしてしまうリスクが高まります。
その他の注意点:
- 単元株数: 銘柄ごとに定められた取引単位(単元株数)を理解し、その整数倍で注文するようにしましょう。
- 買いと売り: 買い注文と売り注文を間違えないように注意しましょう。
- 逆指値注文: 逆指値注文は便利な注文方法ですが、仕組みを十分に理解してから利用するようにしましょう。初心者のうちは、まずは成行注文と指値注文をしっかりと理解することが大切です。
- 取引計画: 感情的な取引を避け、事前に立てた取引計画に基づいて注文を行うように心がけましょう。
慎重な注文で株取引を始めよう
この記事では、株取引における基本的な注文方法である成行注文、指値注文、そしてリスク管理に役立つ逆指値注文について詳しく解説しました。また、実際に注文を行う際のステップや、初心者が陥りやすい間違いとその対策についても触れました。
株取引を始めるにあたっては、これらの注文方法をしっかりと理解し、自身の投資戦略やリスク許容度に合わせて適切に使い分けることが重要です。最初は少額から始め、取引の経験を積み重ねていく中で、徐々に取引金額や投資の幅を広げていくと良いでしょう。
最も大切なことは、焦らず、一つ一つの注文を慎重に行うことです。注文を出す前には必ず内容を確認し、不明な点があれば証券会社のサポートなどを活用して疑問を解消するようにしましょう。正しい知識と慎重な姿勢を持つことで、株式投資の世界で自信を持って第一歩を踏み出すことができるはずです。
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